『Witch Times コラム 精霊は何処から生まれ何処へ行くのか vol.1 古の精霊たち』
by マーガレット・フレイ
このコラムでは、5回にわたって精霊たちの歴史や性質などを紹介していきます。今生きている人間の中に原始の精霊を見た者はいません。ここで書くことは、先人たちの研究によって推察されていることであり、確たる証拠などは存在しないことに留意してください。
精霊の始祖は、人間がこの世界に生まれるよりも遥か昔、この世界が生まれる前から存在していた。
世界に大地と海と空が作られた時、彼は3人の精霊を生み出した。地の精霊カイウス、水の精霊メルウィング、風の精霊フェアスールである。彼らを名付けたのは精霊の始祖であり、彼自身はエクセリアと名乗った。
エクセリアが生み出した3人の精霊が、それぞれ大地、海、空に力を与えた。
このときまだ火の精霊はいなかった。
火の精霊エルノールが生み出されると、彼はまだ凍りつくように寒々としていた世界に熱を与えた。けれどもエルノールの火の力は、時に大地を覆う森を焼き、海を干上がらせたため、他の精霊たちは彼を好ましくは思わなかったようで、しばしば精霊たちの間で諍いが起こるようになった。
古の四精霊たちは、それぞれの力を注ぎ、新たな精霊を創造した。
フェアスールとエルノールが雷の精霊メルティアを、カイウスとフェアスールが砂の精霊ガイネアを、メルウィングとフェアスールが氷の精霊グラシエルをそれぞれ生み出した。
そして、エクセリアを除く七精霊全員の力で生み出されたのが、光の精霊エルグロールである。
彼は、精霊たちの最初の隠れ家を作り出した。
今も存在する〝祈りの庭〟は、光の精霊アルディエルがこの隠れ家を元に作られている。
今日の精霊たちは、この8つの属性のどれかを備えるのだが、精霊の数が増えるにつれ、精霊ひとりの力は弱まっていった。
現在では古の精霊のような強大な力を持つ精霊はいない。
ただ、同じ属性の精霊でも、それぞれが別の役割を担っているのだ。
湖を生かしているのと、河川を生かしているのは別の精霊なのである。
精霊たちは、今も変わらずこの世界に力を与え続けている。
マーガレット・フレイ:魔法生物学者、精霊研究者、作家。
主な著作に『精霊物語』、『古の森』、『妖鳥の種類と生態』など。