フリートフェザーストーリー これまでのあらすじ
オーギュは闇魔術の実験組織Shárú Ar Mort〈シャルアモール〉に囚われ、記憶を奪われて、
闇魔術をはじめとする魔法・魔術、武器の訓練を受けさせられていた。
その後、反闇魔術組織Monoceros Order〈モノケロス・オーダー〉の一団に保護され、
ここで導師長ティベリウスの弟子となり、闇魔術に対抗する手段を学んだ。
Shárú Ar Mortの記憶に侵襲され、この訓練はオーギュを苦しめるものとなった。
闇祓いキーラとその友人セロとの洞窟探索をきっかけに、組織を離れてセデルグレニア魔法魔術学校で魔法を学ぶことにしたが、
生い立ちも何もかもが違う生徒たちの中で馴染めず自主退学。あてもなく森を放浪する旅に出ることとなった。
オーギュは魔法学校を遠く離れ、狼に噛まれたりしながらも危険な森を抜けて旅を続けていた。

オーギュ・ハヴスソル: 魔法使い。人間と精霊のハーフブラッドで、身体的にも精神的にも性別はない。
魔法生物と通じる能力を持ち、風属性/天候操作の魔法に長けている。動物に変身したときの姿は不死鳥。
アロー: オーギュが飼っているフクロウ。自由に飛ぶよりも籠の中にいるのを好む。
フレキ: オーギュと友達の狼。シャスラの峠の群れの中で孤立していた。
(一つ前のお話:『灰色の森と赤い月』)
(詳しいキャラクター設定は、キャラ設定のページにあります。)
『放浪の果てに』
BGM: fennesz + sakamoto / glow
フレキ、私ね、他の人たちがそうしてるように、魔法学校に行って普通に生活すれば、普通の人みたいに生きていける気がしてた。
だけどさ……、私、あの場所から離れて人間の中にいてもね、私だけ……自分だけ人間じゃない気がしたんだよ。
どこにいても、私だけがおかしい、
私だけがおかしい気がしてた。
だけど、それはきっと、〝ほんとうにそう〟なんだ。
ねえ、私たち、ひとりぼっち同士で……
ただ、それを確かめ合うことしかできないんだね。
もう行くの…? そっか……。
ありがと。またね。

フレキがいなくなるとまた、アローとふたりきりで森の中を歩き続けた。
あれからどれくらい遠くに来たのだろう、ただあてもなく歩き、いくつもの森を越えてきた。
訪れた森の中では、ユニコーンのフルール、ペガサスのフリーダ、イピリアのメリル、色んな動物たちと出逢った。
狼に噛まれた傷も、気づけばもうほとんど痛まなくなっている。
それから辿り着いたこの森は、なぜか木の葉が青く、生き物たちも皆青い色をしていた。
食べられそうなものといえば初めて目にする青い色の木の実くらいしかなかったので、私はそれをアローと分け合って食べた。
目の前に青く光る鳥が飛んでいる。
それはまるで私たちの道案内をしているかのように見えた。
その鳥に気づいたアローはカゴから飛び出し、後を追っていた。
私もその後を追いかける。
森はどこまで続いているのだろう。
抜けた先には何があるだろうか。
抜けた先に何か見つけられるのだろうか。
それとも、どこまでも森は続き、私はその中に飲み込まれてしまうのだろうか……。
何を求めて歩くのか。
何を探して彷徨うのか。
何もわからない。
もう何もわからない。
もう……、何にも……。
光る鳥を追いかけて森を進んでいくと、その先は霧が立ち込めていた。
この森の中では、霧 で すら青く見える。
一歩 足を踏み入れると、視界は青白い靄に包 ま れ て い く。
思った以上に霧は深く、私たちは追いかけていた青い鳥をすっかり見失ってしまった。
歩き続け、彷徨い続けて、もう 何も わ からな くな ってし まっ た。
けれど、
それでも、今の私にできるのは、
ただこのまま 歩き続けることだけだった。
::: Ending Song: 鬼束ちひろ / This Silence Is Mine :::